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「パトレイバー」 組織と覚悟

 ちわす。一週間のご無沙汰でした。善浪です。
 ようやく秋の気配がちらっと見えてきましたね。まだちょい暑いですけど。

 
機動警察パトレイバー (11) (小学館文庫)機動警察パトレイバー (11) (小学館文庫)
(2000/11)
ゆうき まさみ

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 今回紹介するのは「機動警察パトレイバー」。ゆうきまさみさんがサンデーで連載していた漫画版です。
 パトレイバーと言えば押井守さんの映画作品が有名ですが、僕は断然こっちの方が好き。

 何故今これを紹介するかというと、この間久しぶりに読み返してみて凄いなぁと思ったからなのです。
 何が凄いか。
 読んでいてほとんど「違和感がない」のです。
 この作品が連載されていたのは88年~94年ですから、今からだいたい20年くらい前の作品といってよい。にも関わらず、全く「古い」感じがしない。
 この作品の舞台となっているのは88年当時から見て10年後の未来、98年から2000年初頭で、それですら今から10年前の世界なのですが、それでも今読んで「古い」とは思えないのです。
 勿論、携帯電話やネットなどのハイテク社会は浸透していないし、登場人物のファッションも古臭いです。ドイツも分裂したまま、ソ連も健在です。まあ流石にこの日進月歩の流れは予期できなかったのは仕方がありませんが、それを加味しても、十二分に違和感なく楽しめるのですから空恐ろしいものがあります。

 ストーリーは現在よりもテクノロジーの進んだ20世紀末。
 テクノロジーの発展と共にあらゆる分野に進出した多足歩行式大型マニュピレーター「レイバー」。
 しかしそれは、「レイバー犯罪」と呼ばれる新たな社会的脅威をも巻き起こします。
 続発するレイバー犯罪に対抗すべく、警視庁は本庁警備部内に特殊機械化部隊を創設。
「パトロール・レイバー中隊」、通称「パトレイバー」の誕生です。

 要は、社会的に巨大ロボットが普及している世界で、巨大ロボットに乗って犯罪行為に走る不届き者がいるので、警察の方でも巨大ロボットを持ち出して対抗しようと、こういうわけですね。

 主人公は新たに創設された機械化部隊、特車二課に配属された新米婦警、泉野明(のあ)巡査。明るくて一本調子、少々がさつなきらいがありますが、仕事にかける情熱はだれにも負けません。
 彼女が搭乗するレイバーは篠原重工が社運を賭けて開発した「AV-98イングラム」。この時代には珍しい7等身のイケメンレイバーで、性能は折り紙つき。
 物語では彼女ら特車二課の一くせも二くせもある面々が、続発するレイバー犯罪に立ち向かう様が描かれます。

 とはいえ、この作品は単純なヒーローものではありません。
 警察組織の末端として戦う特車二課には、凶悪犯以外にも様々な障害が立ちはだかる。
 市民の不理解、マスコミからのバッシング、上層部の汚職、警察組織自体の矛盾、などなど……。
 それでも彼らは公務員。文句は言いながらも、どうにか納得して戦うのです。この辺り、現在の組織を舞台とした物語にも通ずる、普遍のテーマが描かれています。

 しかしそれでも、納得できないことはある。
 人身売買組織に対して何の手も打てないと憤る野明に対し、野明の上司で、「昼行燈」などと渾名されている後藤隊長は言います。

「警察ってのはカゼ薬みたいなもんでな、症状が出てから使われる場合がほとんどだ。
 【中略】
 たしかに警察は犯罪に対してある程度の抑止力は持っちゃいるが、事件を未然に防止するためと称してまだ何もしてない人を見張るわけにゃいかない。
 【中略】
 熱が出たら解熱剤を、せきにはせき止めを投与するように、おれたちも症状に合わせて投入される。
 与えられた仕事をたんたんとこなしているうちになんとか社会は常態を取り戻す。それが警察のあるべき姿なのさ。
 わかるか泉?おれたちの仕事は本質的にはいつも手おくれなんだ。こいつは覚悟がいるぞ」

 その「覚悟」こそが、組織というものを本質的に支えています。
 それは「良い」「悪い」ではない。世界とは基本的に正邪では動かないようになっている。様々なしがらみのある組織ならなおさらです。
 だから組織に属する人間は、正邪という価値観とはまた別の、というより、正邪の判断より上位の「覚悟」を必要とするということです。
 
 勿論皆さんご存じのとおり、警察機構には色々と問題もありまして、劇中でもそれが浮き彫りになることもあるのですが、それでも、その矛盾を抱えてでも、やらなければならない仕事というのはあるのです。
 
 現在、日本のいわゆる「組織」一般に対する信頼は大きく揺らいでいると思います。
 会社は社員の雇用を保証できなかったり、会社の為に社員を使い潰すことも厭わなかったりで、利益追求型経営の弊害がもろに出ているのは、組織人たちの「組織」に対する不信感に現れています。
 会社はいつ自分を裏切るかもしれないし、自分に害をなすかもわからない、というより、現に今そうなっている。だからいざという時は自分も会社の方を切るし、会社を利用することも厭わない。
 要するに、組織も構成員も、お互いを道具としか見なさない。血の通ったものであることを認めない。だから余計に、お互いの信頼感を失くしていく負のスパイラルです。

 特車二課の人たちだって、何も警察組織に忠誠を誓っているわけではないのです。彼らは至って普通の人間なのです。
 平然と上層部の批判をするし、愚痴はこぼすし、サボります。
 それでも彼らが戦っていられるのは、「自分たちが十全に能力を発揮することが、組織が十全に能力を発揮することであり、引いては社会が十全に働く」と信じているからです。
 組織と個人は決して対立するものではなく、お互いがお互いを活かさなければならない。
 その為に、前述の「覚悟」が、組織人には求められるのです。
 こういう問題は今になって現れたわけではない。今ほど目立っていなかっただけで、どんな時代にも、実はあった問題なのです。
 「パトレイバー」が扱っているのは実はこういう普遍的な問題であって、だからこの作品はあと10年後に読んでも色あせないだろうなぁ、と僕は思います。

 とまあ、組織論を中心に解説してみましたけど、この漫画、ストーリー自体が抜群に面白いです。
 基本的にはコミカルな、ゆるーい世界観ながら、要所要所では熱血ですし、環境問題や談合なんかの社会的な問題点もきっちり捉えています。
 特に後半の展開は漫画史に残る傑作、ラストバトルは一分の無駄もない神展開だと僕は思っています。
 「内海」という飄々とした悪役が出てくるんですがこいつがまァ実に魅力的で、こちらも僕の「ベスト悪役10選」に上位でランクインしています。
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テーマ : 漫画の感想
ジャンル : アニメ・コミック

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