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宇宙寿限無

 『宇宙寿限無』


 男ってなぁ不思議なもんで、大人になってもアニメだの何だのの巨大ロボットが好きってのが多いんですねぇ。
 巨大ロボット。しかもその中に乗りこんで自分で動かしてみたい、なんて一度は思ったんじゃないでしょうか。
 これは何なんですかね、やっぱり大きなモノに憧れがあるんですかねぇ、大きな……いや、変な意味ではなくて。

 まあ憧れだけならいいんですが、これが実際自分の仕事ということになると若干厄介なことになりますな。
 趣味を仕事にしちゃいかん、なんて言うでしょ? あれはね、理想と現実のギャップで嫌になっちゃう面もあるんですが、逆に拘り過ぎて仕事にならない、なんて面もあるんですよ。
 まさにアニメの世界が仕事になったりした、なんてぇと、憧れが強過ぎて取り返しのつかないことになったりも致します。

 銀河連邦軍にある少尉がいまして、巨大ロボットのパイロットとして配属されることになりやした。
 コイツがまあロボット大好きな奴でして、大はりきりで自分が乗るロボットを確認しにハンガーにやってきました。

「ほう、これが俺の乗る機体か」
「これはこれは少尉殿。如何ですか、この機体は。先月ロールアウトしたばかりの新型ですぜ」
「なかなかよさそうな機体だ。早く乗ってみたい。……ところで、名前は何と言うのだ?」
「名前、ですか?」
「名前だ」
「“モブ”です」
「……“モブ”…………」
「どうしました少尉殿」
「無いわー……」
「え?」
「名前が! ダサいんだよ!」
「いや、ダサいっていうか、これが正式名称ですし」
「どう聞いてもダサいだろ! 製作者は何も思わなかったのか?」
「でもそれを言い出したら、ガンダムだってそんなに格好良くは……」
「それは言うな! いいんだよダサいもんはダサいんだよ! カタカナニ文字なんてダサすぎる! しかもなんだ“モブ”って! その他大勢みたいじゃないか! この機体で出撃してみろ、『モブ、行きまーす!』とか言わなきゃいけないんだぞ! 敵には『モブ(笑)だ! モブ(笑)が来たんだ!』とか言われるんだぞ! そんなのダサすぎる! 改名を要求する!」
「そんなこと言われてもなぁ」
「これはパイロットのモチベーションに関わることだ! コクピットで孤独に戦うパイロットのメンタルがいかに重要か貴様は……」
「わかったわかった! わかりました! そこまでおっしゃるなら、ま検討してみましょう」
「それならいい。大体、“モブ”というのは正式名称ではないだろう。型式番号とか、なんか、あるだろうそういうのが」
「はぁ、一応正式名称は“RGB-78”ってのがあるんですが」
「それっぽいじゃないか。じゃあ“RGB-78モブ”ってことだな」
「一々全部言うの面倒じゃないですか?」
「うるさいな、こういうのは気分なんだよ。……しかしこれじゃあちょっと物足りないな。なんというか、カッコイイ単語が足りない」
「カッコイイ単語……と言いますと?」
「英語とかさ、ドイツ語とかで、あるだろ? カッコイイ単語が」
「はぁ……」
「この機体、何か特徴のようなものは無いのか?」
「特徴……そうですね……このモブは第三世代型のジブの改修型に当たる機体なんですが、ジブと比べてスラスター推力が当社比1,2倍になってまして」
「1,2倍? なんか中途半端だな。3倍とまでは言わないけど、2倍くらいにはならんのか?」
「無茶言わんで下さい。まあ、しかしその推力を可能にしているのがツイン・ロータリーエンジンでして」
「それいいじゃないか。“ツインロータリー”。これも入れよう。あとは無いのか?」
「あとは、そうですね、装甲板がちょっと特殊でして、クラッシャブル・ストラクチャーを採用していまして」
「クラッシャブル・ストラクチャー?! カッコイイ響きじゃないか。なんだいそれは?」
「敵の弾丸が装甲板に当たった瞬間、装甲板自体が爆発しまして着弾の威力を相殺するというシステムです」
「ふーん。まあ難しいことはよくわからないけど、カッコイイじゃないか。これも入れよう。後は?」
「一応これ現地改修機なんで、宇宙用に各部スラスターが強化されてますね」
「おいおいそれを早く言えよ! カスタム機じゃないか! 高機動型ってことだろ? ストライカー的なことだろ?」
「あと各部に追加装甲と」
「フルアーマーだな!」
「センサー系統をちょっと弄って」
「強行偵察型ってことだな!」
「あとフレームに新素材のエクストラ・バリアント・カーボンを使ってまして」
「オリーブオイルみたいだね」
「うるさいな。……あとは、そうですね、内臓AIにブレインウォッシャーシステムが搭載されてまして、いざという時にはこっちから電波送ってパイロットを操作して純粋な戦闘マシーンにすることも」
「なんかちょっと怖い話が聞こえたような気がするけどカッコイイからいいや。それも採用で」
「うーん、流石にもう無いかな」
「いや、これって俺以外乗らないだろ? 要するに俺専用機ってことじゃないか」
「ということは、えー“RGM-78モブ……」
「“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ”だ」
「長っ!」
「いやー、いいなー、こういうのが大事だよ」
「ていうかアンタの名前」
「ほっとけ」

 てなわけでお気に入りの名前を機体に付けた少尉もいよいよ初出撃となったわけであります。

『少尉、作戦は一刻を争います。現在友軍が敵艦隊に包囲され、このままでは全滅を待つばかりです。早急に敵包囲網を掻い潜り友軍を援護して下さい』
「了解。この“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”の性能を以ってすれば造作も無いことだぜ!」
『長っ! なんすかそれ?』
「ふふん。これが俺の機体の正式名称だ。モブとは違うのだよモブとは!」
『ウザっ! どうでもいいから早く出撃して下さい!』
「了解! 行くぜ“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”! ところでキミ、この作戦が終わったら一緒に映画でもどう?」
『早く行けよ』
「了解! エク・ストラ少尉、“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”! 発進する!」
『はい、次の方どうぞー』

 で、そうこうしている間に戦闘宙域に辿り着きまして、

『ゆ、友軍か!』
「ああ! こちら銀河連邦軍第4恒星艦隊所属エク・ストラ少尉、“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”だ。貴官らを援護する!」
『長ッ! だが頼む! 敵艦隊を排除してくれ……』
「任せろ! この俺の“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”が来たからには一安心だぜ! 喰らえ!」
『外したぞ! 大丈夫か?!』
「クッ! “エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”の攻撃を避けるとはやるじゃないか! さてはニュータイプか?! だが、“エク・ストラ専用RGM78高機動強行偵察型フルアーマー・ストライク・ツインロータリー・クラッシャブルストラクチャー・エクストラバリアントカーボンフレーム・ブレインウォッシャーシステム内臓モブ・スナイパー・アサルトバスター・フルバーニアンカスタム・セカンド”は伊達じゃない!……ハッ!」
『ど、どうした少尉』
「済まない、これ以上は戦えん」
『何が起こった?!』
「もう放送時間が終わっちまった……」

 おあとがよろしいようで。
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