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メジャー漫画家への道

お久しぶりです。
今回取り上げる作品は

meja.jpg
『メジャー漫画家への道』(舞登志郎 オークラ出版・01年)。
作者はエロ漫画家で、掲載誌はエロ漫画誌『コミックピンキィ』でしたが
本作はお子様にもおすすめできる全年齢向けです。

エロ漫画家の舞登氏(以下この表記)が、
メジャー漫画家になる日を夢見て悪戦苦闘するという
ドキュメンタリー……という分類でいいのでしょうか。

かなり大袈裟に描かれているので
「盛った」くだりもかなりあると思いますが、
ひとまず大体真実であるという判断で話を進めます。



まずは「メジャー漫画家になりたいという話はどうなったのか」
と舞登氏を問い詰める『コミックピンキィ』の伊藤編集長。
講談社のアフタヌーン編集部へエロ漫画の原稿を持って行くも、
たいしたアドバイスもなく名刺1枚貰って実質的な門前払い。

そこへエロ漫画家の先輩であるロケット兄弟氏が登場。
abe.jpg
阿部ゆたかというペンネームで一般誌で仕事をしていると
明言されていますが、阿部氏のHPではその点に一切触れられていません。 

 「児童向けに探偵ものの単行本を~」というのは『名探偵コナン』のことです。
 当時は人気を受けて小学館の学習雑誌でも連載していたのですが、
 青山剛昌氏はサンデーの週刊連載だけで、そこまで手が回らなかったため、
 阿部氏や丸伝次郎氏などが描いた作品が『特別編』として掲載されていたのです。 

もともと少女漫画家としてデビューした阿部氏のアドバイスは、
端的にいえば「流行に迎合しろ」という至極真っ当なもの。
しかし舞登氏は「自分の事しか考えられない」という理由でそれを無視し、
かつて自分が少年時代に胸を熱くさせた作品を思い出し涙ぐみながら
ヒーローが活躍する作品のコンテを描き上げます。


タイトルは『戦うお父さん』
田舎を舞台に、独りでレジャーランド建設に反対する男性を描いた作品。

伊藤編集長と一緒に角川へそれを持ち込むも、
一読した編集者から「これ誰が読むんですか?」
と雑誌の傾向を考えたら至極真っ当なお言葉をいただき、
ショックのあまり全裸になってビルから飛び降りるのでした。

名称未設定 1
ここまで言われても我を通そうとする姿勢はすごいと思います。

 まず、角川(誌名は記されていないものの、若者向けの編集)に
 持ち込んだ意図が全くわかりません。
 雑誌掲載の時点でバブルが崩壊してから数年、
 もはや時代にそぐわない作品であったことはもちろん、
 こういう後ろ向きな題材は少年誌向きではないこと。

 たとえばビックコミックやモーニングをはじめとした青年誌なら、
 『ぼくの村の話』(尾瀬あきら作。成田空港の反対運動を描いた作品)
 などで手垢がついていたとはいえ、
 多少は舞登氏の望むリアクションが得られたと思うのですが、
 素人判断でしょうか。


その後舞登氏は『エンジェリーズン~天使のいいわけ~』という
エロゲーの原画を手掛けることになります。
漫画と違い常に同じサイズのスペースに収めねばならないエロゲーで、
尻と顔をひとつの画面に収めるために苦悩するくだりは
本作一番の笑いどころでしょう。

 ちなみに本作はさっぱり売れず、オレンジ色のパッケージが
 長らく投げ売りワゴンで目立っていましたが、まあそれはそれ。


エロ漫画家からメジャー漫画家になった知り合いとして
当時月刊チャンピオンで連載していた
『花右京メイド隊』でヒットを飛ばしたもりしげ氏が登場。

元々エロではどぎつく救いのない陵辱モノを描いていたもりしげ氏。
(当時の読者はそのくらい知っているという判断か作中では触れられていません)
舞登氏は『花右京~』を一読し「らしくない」「何の味もない」
「もりしげさんじゃなくても描けるんじゃないですか」
と罵詈雑言を浴びせます。

ここで漫画ならではの演出ですが、場面はコミケ会場に移り、
kuso.jpg
同人誌を見ながらしたり顔で、上から目線で流行を語る
よくいるタイプのオタクへ回し蹴りを加えるもりしげ氏
(※想像の世界なので一切問題はありません)。

「漫画っつーのは自分だけが分かってたり、
 どこぞの偉いさんに読ませるものなのか?」
「分かるか!?何に怒っているか!!てめーらどいつもこいつも逃げてんじゃねえ!!」
と啖呵を切るのでした。

 本作で一番理解に苦しむ場面がここでした。
 こういう作品の読者の何割かは、ぶん殴られる側に属するオタクでしょうに。

 もりしげ氏の姿を借りて、彼らを「何もしてない」と否定したのは、
 世の中の……舞登氏の現状を鑑みるとステップにしなくてはならない
 読者たちの流行が、舞登氏が描きたくて仕方ない泥臭いヒーローものを
 受け入れてくれる流れと逆行している現実に対する
 苛立ちの表れでしかなかったのではないかと思います。


さらにテレビ番組『ガチンコ!』の企画、という名のヤラセと仕込みで
『帝都大学物語』(作中表記)の作者である江戸川達也先生(作中の略)に
原稿を見てもらうことになった舞登氏。

テレビ映えのする漫画家として有名だった豪邸……もとい江戸川氏。
goutei.jpg
「何を描きたいのか全然伝わってこない」
「自分に描きたいモノがない人は漫画なんて描かない方がいい」
と彼らしい物言いで一刀両断されてしまうのでした。

さらに、作中で見る限りではかつてない好感触だった
月刊チャンピオンの編集部へ、ホラーものの企画を提示したところ
すでにヒットしている作品があるから「やめましょう」との返事が。

そんな凹むことが続く中、実家の農作業を手伝えという
電話が入って……。



エロまんが家が赤裸々に自分の実情を晒して
一本の作品にしてしまうというネタは、時代を先取りしていたといえます。

本作は当時もサブカル系界隈でそこそこ話題となり、
単行本は1巻とナンバリングされているものの、
刊行後程なくして掲載誌のコミックピンキィが休刊。
自動的に連載は打ち切りとなりました。

私が覚えている限りでは、
単行本掲載分の最後で父親から「見合い結婚して実家の農業を継げ」
と言われた舞登氏は、激怒して家を飛び出したものの、
あとで母親から、父親は彼のエロ漫画の単行本を買って読んでいる、
と話を聞かされる、というエピソードが続いていました。


しかし、連載が終わってから15年ほど経ったいま読むと、
この逆張りっぷりにはうすら寒さすらおぼえます。

舞登氏の作風は70年代少年漫画・アニメの影響が強い
劇画調のタッチです。彼を受け入れてくれそうなのは
当時はまだ少々画力が拙くてもどしどし受け入れていたエロ以外では
青年誌やマイナー系サブカル誌であったはずですが、
敢えてそれらを一切無視して、少年誌や
オタク層へ向けた指示ばかり出す伊藤編集長。

舞登氏も様々な人物からの「流行に乗れ」という
アドバイスを実質的に無視、自分の内面に閉じこもって
流行から外れた、古臭く地味で直球なヒーローものに固執するばかり。

もしかすると、これはマイナーエロ漫画家が
越えられない壁に登ろうとしがみつき、
転落することを繰り返す様を見て楽しむという
とんでもなくブラックなギャグだったのでしょうか。


なお、舞登氏は本作終了後にエロ漫画の単行本を2冊出したものの、
ここ7年ほどは作品を発表していないようです。
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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

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