スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

幼女と世界認識論

うぇい、どうも御無沙汰! 善浪です。
 今回は最近読んだ漫画の話です。

リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE)リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE)
(2010/06/22)
安倍 吉俊

商品詳細を見る


 安倍吉俊さんを初めて知ったのは「ニア・アンダーセブン」でしたけど、それから読むのは久しぶり。
 全体的な印象としては、アマゾンレビューでも指摘されているとおり、アグレッシブな『よつばと!』って感じですね。

 「リューシカ」という少女が日常の中で見た世界の不可思議さが描かれますが、彼女の世界に対する態度が実に「哲学」で、私は感心しました。

 例えば、ある日彼女はりんごを見ていて気付く。
「めだまはにこあるのにいっこにみえるのはへん!」
 さて、みなさんはどう思うでしょう? これを変だと思うのは、やはり幼児に特有の感覚でしょうか?
 彼女は、目玉の一つ一つが「主体」であると思っているのです。その目玉を自分が統合しているとは考えもしない。お姉ちゃんの「どっちの目もリューシカの目でしょ」という言葉は、だから彼女には通じないのです。
 
 さらに彼女の考察は世界へと進みます。
 右目と左目の見えているものが違うのだから、お姉ちゃんやアニー(=兄)の見ている世界も自分とは違っているはずである。彼女は鏡に映った自分と問答します。

「わたしはせかいのなかにいる」
「わたしはせかいをみている」
「みんなせかいのなかにいる」
「みんながせかいをみている」
「みんなおなじせかいをみている」
「みんなちがうせかいをみている」

 誰でも、「ひょっとすると私の見ている世界と他人の見ている世界は違っているのかもしれない」と考えたことがあるでしょう。同じリンゴを見ていても、その「赤い色」は人によって違う色が見えているのかも知れない。私にとっての「赤」とあなたにとっての「赤」は違う色なのかもしれない。
 私の食べているリンゴ飴の味と、あなたの食べたリンゴ飴の味が同じである確証など、どこにあるのだろう。私とあんたは違うのに。
 これはまさしく「クオリア」の問題です。
 何かを見る、触る、味わう……感じるとはどういうことなのかという問題です。
 そしてリューシカは、ここでこの問題の核心を、実に単純な方法で突く。

 リューシカは「私の感じているものと皆の感じているものは、ひょっとすると違うかもしれない」という疑問を得るのですが、彼女の凄いのはそこで満足しないところです。
 「みんなちがうものをみている」→「そんなのいやだ!」
 となるのです。
 そしてこれこそが、私が一番面白かった点。

 実は、「私の感じているものと皆の感じているものは、ひょっとすると違うかもしれない」という感覚は、「私の感じているものと皆の感じているものがひょっとすると違うかもしれないにも関わらず、同じ言葉で語ることができるし、現に語られている」という事実に依拠しているのです。
 「ひょっとすると違うかもしれない」と語る為には、差し当たってその現象を誰か他者と同じ言葉で共有しなければならない。
 「あなた」と「私」は絶対的に異なる存在者です。「あなた」と「私」の間には、絶望的なまでに深い隔絶がある。
 しかし、その隔絶は、実はあなたと私が同じ言葉を共有することに担保されている。

 実は、「赤い」という色の「中身」、その赤を各人がどのように感じているかは、さしたる問題ではないのです。
 大切なのは、絶対的な隔絶を持つはずの他者同士が、それを同じ「赤い」という言葉で語る「こと」なのです。
 
 これはキルケゴールが言っていたことですが、「自己」とは「関係がそれ自身に関係するということ」(「死に至る病」)である。
 そう、自分って、確かな何かじゃないんです。他者との関係においてその都度起こる「出来事」なんです。
 
 最後にリューシカは夕焼けを見て思います。

「このそらはリューシカだけがみている まだみんなしらない
 アニーもあーねーちゃんもばーもまーもしらないんだ…」

 そしてその後、リューシカはその空を、アニーと一緒に(強引に)見ようとする。
 彼女は、私がこれまで書いてきたことなど微塵も考えてはいないでしょう。ただ感覚的に知っているのです。
 「世界」とは、誰かと一緒に見て、一緒に味わって、一緒に感じるものなのだと。そして、その限りにおいて、「私」も「あなた」も「在る」のだと。

 まーそんな感じで小難しい話をしてきましたが、純粋に面白いのでおススメですよ「リューシカ」。全編カラーページだし。ちょっとボリューム少ないかもしらんけど。
スポンサーサイト

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

熊谷雑文組合

Author:熊谷雑文組合
熊谷雑文組合運営のブログです!皆で書いてたりします★
◆メンバー(このブログの執筆者達)
小竹大樹…隊長的な人
朽葉…ネットランナー
善浪栄一…目が死んでる
萌兄…イラスト係兼、メイド狂
環俊次…2次元ジゴロ
加糖コージ…中学二年生
きのこ汁子…ドール愛好家
など。

最新記事
カテゴリ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
月別アーカイブ
Twitter
カウンター
ご意見、ご感想

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
コメント
トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

デジタル書房
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。